11/19/2016
Strain Wave Gearing GBC Module
製作開始:2016年3月
完成:2016年7月
公開:2016年11月
波動歯車装置の機構を使用したGBCモジュール作品です。2012年に製作した波動歯車装置の模型をベースとしています。波動歯車装置は産業用途等で使用される減速機で、ハーモニックドライブ・システムズ社の製品が有名です。この機構をGBCモジュール化する構想は以前から持っていましたが、実現がすることが難しく作品を完成させるまで時間がかかりました。
波動歯車減速機はウェーブジェネレータ、フレクスプライン、サーキュラスプラインの3つの部品から構成されます。このモデルでは、中央の灰色の楕円体がウェーブジェネレータ、黄色いカップの部分がフレクスプライン、外側のダークブルーイッシュグレーの部分がサーキュラスプラインにそれぞれ対応しています。
フレクスプラインの歯数は32、サーキュラスプラインの歯数は36です。これを減速機としてみると、減速比は、(サーキュラスプライン歯数-フレクスプライン歯数)/フレクスプライン歯数=(36-32)/32=1/8となります。ウェーブジェネレータが入力軸、フレクスプラインが出力軸となります。回転方向は逆向きになります。ウェーブジェネレータが8回転すると、フレクスプラインが逆方向に1回転します。
興味を持った機構をGBCモジュールに応用するときには、ボールの動きがその機構の特徴を表すように工夫します。今回は波動歯車装置の機構をGBCモジュールに応用するにあたり、フレクスプラインのうねるような動きをボールの搬送に利用しました。これは、 歯車装置がフレクスプラインの減速された回転運動のみを出力として利用するのと異なります。
今回のモジュールでは、フレクスプラインのうねる部分にボールを把持するチャックを付け、フレクスプラインの動きに合わせてボールが運ばれるようにしています。フレクスプラインのうねるような動きにあわせてボールが搬送されるのが、このモジュールの見どころだと思います。
フレクスプラインとサーキュラスプラインの歯数差は4としました。これは、ボールを把持するチャックの間隔(=4スタッド)に、ウェーブジェネレータが180°回転した時のフレクスプラインの移動量を一致させるためです。
フレクスプラインを取り出したところです。フレクスプラインは楕円に変形できるようにやわらかく作る必要があります。今回は波動歯車装置としては減速比が小さい(1/8)ため、フレクスプラインの変形量はさらに大きくなります。この大きなひずみを吸収できるようにボールジョイントを使いました。このような変形する部分を作るのには、レゴブロックの弾力が役立っています。フレクスプラインがウェーブジェネレータと接触する部分にはローラーを取り付け、摩擦を減らしています。ボールを把持するチャックは、なるべくコンパクトになるように努力しました。チャックがボールを把持した時のチャックのひずみを、長さ4のストッパー付きシャフトが吸収しています。
減速機からフレクスプラインを取り外して、ウェーブジェネレータとサーキュラスプラインがよく見えるようにしたところです。中央の灰色の楕円体がウェーブジェネレータ、外側のリングがサーキュラスプラインです。
サーキュラスプラインの内側に並んでいる赤色の丸いパーツがギヤの歯になっています。この歯がフレクスプラインと噛み合います。サーキュラスプラインはこのモジュールで最も設計に苦労した部分です。サーキュラスプラインはフレクスプラインとは対照的になるべく変形しないように作る必要があります。サーキュラスプラインには内側から押し広げる力が加わります。均等な36個の歯を持ち、十分な剛性があり、かつ見た目が美しい組み方を見つけるまでたくさんの試作が必要でした。
ウェーブジェネレータはシステムベースの部品で作りました。ウェーブジェネレータの楕円は長軸の長さの精密な調整が必要です。そのため1/5スタッド単位で長さの調整をしています。長すぎると回転摩擦が大きくなり、短すぎるとラチェッティングが発生します。
このモジュールにはウェーブジェネレータ、ストッパー、階段、かき混ぜ羽根の4つの駆動部があります。ストッパーは波動歯車装置のボール乗り口にあり、ボールが波動歯車装置へ入るタイミングを決めています。それら全ての駆動部をPF XLモーター1つで駆動しています。モーターの力を確実に伝えるため、トルクリミッタは入れていません。
ボールの入力部は、Cycloidal drive GBCモジュールで使用した階段を流用しています。出力部は、Fork to Fork GBCモジュールの出力部Snake slideを流用しています。
このモジュールの耐久性は未検証です。波動歯車部分にかかっている負荷が大きいので耐久性は低いと思います。